妖怪大魔王・コバ法王の日記

NPO法人GRA代表、妖怪:小林が書く、オートバイや人生、社会や文化など、日頃思っている事です

ウォーニングランプ点灯とOBD、考察記

 

先日(10/11)、トライアンフのトラ君が始動後にエンジンが止まるという病気にかかってしまい、その原因を探るべくあちこち触っている内、何故か? メーターパネル内の “ ウォーニングランプ ” が点灯したままになってしまった。

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ウォーニングランプと言っても、重要な油圧ランプや水温ランプではなく、エンジン各部のセンサー関連に関するランプだから、特別に注意深く整備をする必要は無いけど、目の前でオレンジ色のランプが点灯したままだと、[スピード落とせ]の道路標識よりも煩わしい。

そこで、電子制御式燃料噴射エンジン車に特有の自己診断回路・OBD の知識を集めて、これからの対処・修理の方法を考えてみた。

 


『 燃料噴射エンジンの誤解 』

 

きっと、今の若者は誤解しているかも知れない。
「 燃料噴射エンジン車は最新で、キャブレター車は昔の車両だ 」と。

馬鹿を言っては困る。 電気自動車から自動車の歴史は始まり、今のエンジン(内燃機関)を搭載したのが 約130年前だが、燃料噴射エンジンは 今から 100年前には空を飛ぶ飛行船などのエンジンとして立派に実用化されていた。つまり古いのだ。

ただ、燃料噴射システムを最初に利用したのは ディーゼルエンジンで、ガソリンエンジンで実用化されたのが 1950年代、今から 60年余り前の事。恐らく、これを読んでいる殆ど人は生まれていない頃から走っていたのだ。

そして、これからが問題の核心に入っていくが、モノゴトをややこしくしたのが 電子制御方式(以降  電子式と記載)の燃料噴射装置が一般的になってからだ。 自動車では 1960年代、オートバイでは 1970年代に市販車が発売されて多くの人が利用する様になってからだ。因みに、オートバイの市販車で最初に搭載した車両がカワサキの Z750GPで、僕も色々と整備・分解しながら競技に参加していた多くの想い出がある。


 

『 電子式燃料噴射システムとOBD 』

 

電子式燃料噴射システムは様々なセンサーと ECU(エンジンコントロールユニット) という 半導体を組み込んだ制御装置や、高圧噴射用の燃料ポンプなど、それまでのキャブレターでの燃料供給システムには無いモノを多く必要としているので、当然の様にコストが掛かって車両価格も高かった。

ただ、排気ガス中の有害成分を減らしたり、燃費を良くする為に燃焼状態をきめ細かく制御する為に、電子式燃料噴射エンジン車が増えていき、環境とエコへの社会的要求が高まるにつれて 電子式燃料噴射エンジン車でないと対応できなくなった。だから 今や原付バイクでさえ電子式燃料噴射エンジンを搭載している程だ。

しかし、そうなった時、困った事が起きてしまった。修理屋さんが困ったのだ。
それまでの キャブレター車だと全ての機構・メカニズムは分解して確認ができたけど、電子式燃料噴射エンジン車の場合だと、エンジンや車体各部に数多くのセンサーがあるので、エンジン不調になった時にセンサーが悪いのか別のところなのか 分からなくなってしまったのだ。

当初は、各メーカー毎に専用のエンジン制御関連検査システム(アナライザーと呼んでいました)を開発してデイーラーでの整備用に設置していたが、一般の整備工場などにとっては、新車価格の数倍もする検査システムをメーカー別に用意する事は不可能な事。 だから、個別に オシロスコープやシステムに組み込まれた 自己診断回路を別個に読み取る(点滅回数で良・不良が判断できた)時代が暫く続いていた。

さて、そんな時、アメリカ人は偉大! というか合理的だ。
1980年代後半、アメリカで販売する乗用車や乗用トラック(米国独自の税システムで優遇されている小型トラック)には センサーなどを簡単に点検する為の専用端子の装着を義務付けたのです。 それが、OBD(オンボード ダイアグノーシス)というシステムだ。




『 自己診断用規格・OBD の弊害 』

そういう訳で、米国の四輪車や二輪車市場での販売が欠かせない多くの車両メーカーは、米国が定めた規格・OBD (1996年からは OBD2 規格だが、以降も OBDと記載 )を搭載している事になる。 だから、きっと君の車両にも、以下の画像の電気信号線が繋がった端子がある。

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トラ君にある OBD 用端子はこちら。

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と、ここまで OBD 用端子が殆どの車両に装着されている事は判ってもらえたと思うけど、「  なぜ?これが弊害になるのか? 」と考えた人は少ないと思う。 そこが、今回一番言いたい事なのだ。

弊害を書く前に、この端子の規格無い様と、センサーを始めとするシステムの状態を確認する為のテスター・判定機器を紹介しよう。


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では、この 自己診断用規格・OBD の弊害を書こう。
弊害は二つある。 一つは、修理屋さんの診断と判断技術が低下した事で、二つ目は 自己診断機能の発展を阻害している事だ。



 

『 時代遅れの OBD 』

 

OBD システムは 便利な事は間違いない。 不調が発生した時に ウォーニングランプが点灯するので、その時に テスターを接続すれば どこの不調でウォーニングランプが点灯しているのかが判るからだ。

特に、四輪車の衝突安全装置・エアバッグ の制御システムには 四つの車輪それぞれにスピードセンサーが組み込まれていて、ウォーニングランプで異常を知らせた時に、どの車輪のセンサーなのかも一目で判断できるから便利と言えば便利だ。

ただし、そのセンサーが何故不調になったのかは テスターは教えてくれないが、修理屋さんは そんな事はさほど気にせず、テスターに指示されたセンサーを交換して「はい!修理できました。料金は 〇〇です」と言うだけで、再発の可能性を抑える為の注意点の一つも言う事が出来ない者が多い。 それでは、定期健康診断で対応する内科医の方がマシな程で、それでは困るのだ。何故なら、人間は自覚症状を感じるし、身体には自己修復機能が備わっているのに、車両には少しずつ具合が悪くなっている事を知らせる機能はなく、悪い箇所を自動的に修復する機能さえなく、本当に壊れてしまってから ウォーニングランプ点灯させるから、修理に来い! と言っている 不親切で不経済、故障した真の原因を判断できずアドバイスさえ出来ないサービス工場を増やしているのが OBD だとも言える。

そして、二つ目の 自己診断機能の発展を阻害している事の方が問題だ。何故なら、1990年代に 生まれた規格・システム がそのまま残っている事を思い出せば判ると思う。 当時は、コンピューターが オフィスコンピューター全盛の時代から パーソナルコンピューター(PC)へと 移行しつつあった時代で、そんな古い時代に決められた規格で 現在の進んだシステムが束縛されているのだ。

考えてみて欲しい。 1995年、Windows 95 が発売されて、それまでの PC は  コマンド(文字)を打ち込んで、ようやく起動させたり システムの保守を 各自で行なっていた時代。 周辺機器で言えば、8インチフロッピーディスクが現役で、大容量のハードディスクが 20MB だった時代に考えられた規格が 今も最新型の車両に義務つけられている様なものなのだ。 スマートフォンが普及し始めたきっかけになったのが 2011年発売の iPhone 4S だけど、4S 用の充電・接続用端子は古くて大きい昔の規格で、当然、現代の iPhone には使えないというのに、1990年代の 古くて無駄に大きな端子が シーラカンスの様に現代の車両にもれなく残っている事に疑問を持たない方が明らかにおかしいのだ。

システムや制御技術が一気に進歩している現代の車両ならば、OBD に頼る事なく、車両のメーターパネル上の操作で分かって当然だし、OBD の端子数に遮られて出来なかった診断機能を一気に増やす事も可能。更には、本来ならば、徐々に性能低下・劣化している状況を捉えて、「 〇〇km 走行以内に ▲▲が異常と判断される恐れがあります 」程度は 事前に知らせるぐらいは朝飯前になるべきだと思う。

 

 

『 トラ君への対処 』

 

という訳で、トラ君の ウォーニングランプ 点灯の理由の判定に OBD テスターの力を借りず、気温、急気温、気圧、排気ガス中のO2センサー、クランク角センサー、スロットルポジションセンサー など、関係するセンサーは両手で数えられる程度なので、この機会だからこそ 一つひとつ 目で見てケアをしてやろうと考えている。

と言っても、OBD システムや OBD テスターの事を毛嫌いしている訳ではない。 道具は使い方一つで 何も考えない人を生むけど、考える範囲を絞り込んでくれる良き仲間にもなる。それに、OBD は 20以上変わらず続いている世界標準の規格で、その間に販売されている四輪車の台数を考えれば、近所の修理屋さんには 数個の OBDテスターが転がっているし、新品を買い求めても 安価だ。

先に紹介した形式の テスターは、 3,000円 ~ 7,000円程度で購入できる。 更には、下で紹介するような、OBD 端子から 無線( WiFi, Bluetooth )でスマートフォンに情報を飛ばして読む形式の機器であれば 1,000 円以下で簡単に購入ができるからだ。

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それに、ウォーニングランプの点灯を解除するだけなら既に「キャンセラー」を入手済みだ。だから、当面はじっくりと腰を据えて、一つひとつ勉強しながら、トラ君の世話をしてやるつもりだ。


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