妖怪大魔王・コバ法王の日記

NPO法人GRA代表、妖怪:小林が書く、オートバイや人生、社会や文化など、日頃思っている事です

クロソイドか? フィボナッチか?

 
今も、悩んでいる事があります。
書く事は決まっているのに、適切な言葉が見つからないのです。
それは、 “ オートバイが描くライン ” の表現です。
 
  
『 ライディング本はたくさんあるけど 』
 
「オートバイの基本講座」で、ライディング講座を始める準備を進めている最中です。  
ライディング、つまり乗り方を講義している本はたくさんあるけど、オートバイの基本を正しく理解して解説している本はとても少ないのが気になっているのです。

本来は、オートバイを物理法則によって支配された運動物体として捉えて、そこから正しいライディング理論を説くべきなのに、そういう本は少ないうえに表現が難しく、初心者にも理解が可能な本は見た事がないのです。 


『 形から入り過ぎる日本人 』
  
日本人の特性として、合理的で本質的な理解よりも、見かけ(見た目)を重視した理解を好むように思います。

例えば、日本古来の武術や競技では“礼”という形を重んじ、中・高校では制服や髪型などの形で人格を判断され、就職活動ではスーツから靴、バッグ、髪型まで形がルールであるかのように扱われ、それを誰も不思議とは思わないのです。
 
だから、殆どのライディング講習本では、ライダーの姿勢や視線、ブレーキやクラッチの操作など、外から見て判断できる形にこだわった内容の本ばかりで、それを誰も不思議とは思わないのです。

しかし、オートバイのライディングは形で操作するものでも、形だけで判断できるものでもありません。
  
人間よりも重く、人間よりもはるかに力が強く、人間には出来ない高い運動能力を持つオートバイを正しくライディングするためには、形の習得ではなく、オートバイの特性(物理的な運動特性)を正しく理解する事が一番大切なのです。
  
閑話休題 )・・・ 講習本や講習会の事は別の機会で書きましょう。
 
  

『 オートバイが描くラインは? 』
  
長い競技生活とそれ以上に長い講習活動の中で学んだ事は、「 オートバイが走りたいように走らせるのが一番良い! 」という事です。

それには、重くて大きな力を出せるオートバイを、人間の両足裏の面積より少ないタイヤ接地面を利用して、安全に走らせるには、(物理学的に)オートバイはどんな動きをするのが基本なのかを理解するのが欠かせないのです。
  
例えば、一定の角度でオートバイをバンクさせたまま、減速したり加速した場合、オートバイはどんな(走行)ラインを描くのか、それを理解する事はとても大切です。   

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高速道路などで設計に取り入れられている『 クロソイド曲線 』
一定の変化率で曲率を変化させる為に用いられている手法で、ジェットコースターのループ部で急激な加速度変化を発生させない為にも用いられている曲線。
   
過去に行なってきた講習では、この『 クロソイド曲線 』を説明に用いてきたのですが ・ ・ ・
  

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自然界の定理の一つとも言われる『 フィボナッチ曲線 』
オウム貝の形を支配し、樹木の枝の別れ方にも表われているというフィボナッチ(数列)は、とても美しい。
  
ああ、悩んでいます。
オートバイが描くラインは、どちらの曲線だろうか?
それとも、どちらとも違うのか ・ ・ ・ ・ 。
  
誰か、答えを書いてある「 本 」を教えてください。
 
 

『 あとがき 』

この文章を最初に書いたのは 2014年。 でも、今も「オートバイの自然なラインは?」 という命題には悩んでいる。
掲載した二つの図だけを見れば、好きなのは圧倒的に美しい「 フィボナッチ」、でも 現実を考えると「クロソイド」という具合に。
   
それならば、「 クロソイド 」を採用すれば良い、という意見も無いではないが、腑に落ちないのである。
それは、オートバイと自動車の走行特性が大きく違っている事が原因だ。
    
元々、自動車は直線走行するのが基本で、曲がる時にはハンドルで無理やりに曲げる機械だ。( オートバイは曲がるのが基本の機械 )
だから、高速道路のインターチェンジ部は、曲がるのが苦手な自動車を補助するために “ クロソイド曲線 ” を基本に設計してあり、実際に自動車で走行する際には舵角を意識せずに済み、その恩恵を実感している。
クロソイド曲線は数学的な解析で導き出された曲線だから、元々 “舵角” など余分な項は考慮されていない、と考えれば納得できる。
   
しかし、オートバイは違う。
オートバイの場合は、人間が一切の操作を加えなくても、その “舵角” は常にバランスを取る様に変化している。
特に、バンクさせたまま中速域から低速域へと減速させる際には、速度の低下に合わせて舵角が増え、自然に大きな曲率のラインへと変化し続ける。
この特性が悩みの種なのだ。
  
仮に、数理モデルの解析が得意の人がこの問題に関心を持ってくれるならば、是非、解析を願います。
 
それまでは、「 クロソイド的ライン 」と表現しよう。

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