妖怪大魔王・コバ法王の日記

NPO法人GRA代表、妖怪:小林が書く、オートバイや人生、社会や文化など、日頃思っている事です

恐るべし Valeo(ヴァレオ)社

トラ君の 丸型2灯式ヘッドライトを交換します。
  
マルチリフレクター式なのに暗くて、
高効率バルブとリレーユニットと専用回線を奢ってやっても、
3m先地面をスポット照射する等配光特性が悪くて、
ランプユニットを交換する事にしました。
  
車用丸型4灯式ヘッドライトの外側2灯を求め、
以前の2大ブランド、 MARCHAL や CIBIE、
国内マーケットで探したけど無く、
仕方なくイギリスから CIBIE を直接購入した。
  

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    *    *    *    *    *
  
1950年代後半以降、アメリカの販売規格に合わせ、
丸型4灯式ヘッドライトは多くの車両に採用されて、
2大ブランド以外、CARELLO、LUCAS、HELLA など
色々と選べる時代もあったのに。
  
大好きな MARCHAL 製品は無く、届いた CIBIEは
同じ フランスの VALEO(ヴァレオ)社に吸収され、
一ブランドとして残っているだけ。
  
この VALEO 社、ドイツの BOSCH と並び、
自動車用電装部品メーカーとして 世界屈指の会社だ。
日本の 一光(IKKO)や PIAA を 傘下に入れ、
自動運転時代、電気自動車時代へ向けて発展しているようだ。
  

   *    *    *    *    *

  
それにしても、時代は既に LED の時代だ。
    
今さら H4バルブ形式のランプユニット買ったけど、
きっと、トラ君以外に使い道、無いなぁ ~


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「 走りたくないコース、 走りたいコース 」

ジムカーナに限らず安全運転競技大会のコース設定の最近の傾向には疑問だ。

愛に乏しく、夢少なく、個性出せない設定が目立ち過ぎる。

 
競技用の走行コースは、バレエやアイススケート競技、ビアノやバイオリンのコンサートなどと同様に、芸術性や創造性が欠かせないものだ。

コースは曲であり、曲に合わせて舞ったり演奏するのと同様に、コースをオートバイで演奏し、何気ないフレーズの中に独自の解釈を込めて、技術と芸術を高いレベルで融合させてこそ多くの人を魅了できるのだ。

しかし、初心者を拒絶する16分音符が羅列させただけの様なコースに愛は無く、独自の解釈を込める夢は無く、自分らしさを発揮させる場も無いようなコースを走り、ただタイムだけで評価されるはつまらない以外何者でもない。
 

初心者でも挑戦したくなる簡単なコースで、大型車でも能力を発揮できる全音符があり、その上で 三連音符や変調のセクションもあって、独自の解釈と能力で演奏ができて、それにタイムと感動も伴ってくるコースをいつでも走りたい。

それはレースの世界でも同じで、世界各地にあるレースサーキットのレイアウトはそれぞれに攻略し甲斐にあふれているけど、初心者でも必ず楽しめて完走できるコースばかりだ。

オートバイを意のままに演奏する人を称えるのが競技大会であるならば、そんなコース設定でなくてはならないだろう。

 

 

 

「 横断歩道 」

駅に向かい歩いていると、駅間近にある信号機の無い横断歩道で、
年齢 80歳前後、高齢のご夫婦らしき二人が立ち留まり続けていた。

見れば、女性の方が歩行器を使っての歩行なので、
なかなか渡るタイミングが取れずにいる様子だった。

そこで、先に横断歩道の半ばまで歩き、走る車を止め、
二人に横断を促した。

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しかし、歩行器があるとはいえ、その歩みは遅い。
時速 1㎞以下では 全長 20m程の横断歩道は長過ぎる。

それを見て、止まっていた車が直前をすり抜けようとした。
年齢50歳位の女性が運転するベンツ、両腕を広げて制止した。

道路交通法で「徐行」または「停止」の義務になっている以上に、
他者の人生に与えるリスクのある行為はモラル違反だ。

とかく運転者は、「法律だから止まる」以上の意識は無いようだ。
中には 「止まってあげた」という慈善的意識の人もいるようだ。

横断歩道は、歩行や聴覚・視覚等に機能障害を抱えた人も通る道。
そんな人達にとって、横断歩道は事故に遭遇するリスクの高い道。

一方、運転者にはそれに相当する程のリスクは無い場所だ。
他者の人生へのリスクを考えられない者は運転すべきではない。

 

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ジャイロUP号 ウンのつき ?

1995年の震災、引っ越しで住居とガレージが離れてしまった時、
ジャイロUP号がやって来て、ガレージ通いやタイヤなど大型荷物運搬の足となって活躍してくれている。
   
ところが、先日走行中「バキッ!」という異音と共に、フロントブレーキの効きが変になり、ハンドル周りのカウルに付いていた右ウインカーレンズが外れ落ちてしまった。
  
当日、外れたカウルを分解して原因を探ってみたけど判明せず、
先日、じっくりとフロントタイヤを見て原因が判った。
右側サスペンションのリーディングアームの取付け部が破断してしまっていた。

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それに伴って、ブレーキユニットが回転した関係で、引っ張られたブレーキケーブルがカウル内でウィンカーを押し出し、ダンパーロッドを大きく曲げてしまっていたのだ。
  
状況が理解できた後で、破断した原因を考えてみた。
「 そういえば、破損した当日朝、フロントバスケットの中、見知らぬ愛犬家から、ビニール袋入り柔らかい“落とし物”が入れてあった!! 」
「 そうか、あれが  〇〇のつき? 」
 
 
いや、いや それだけでもない。
「 住居前、彼らの散歩道にあるジャイロUP号、いつも目を付けられてマーキングされているからかも?? 」
「 実際、フロントホイール右側だけが汚され、ホイールだった錆ている程だからかも ! 」
 
 
交換が必要な部品、〇〇オクで「ポチ!」とした後で考えた。
「 被害避けるため、乗らない時はフロントホイール外しておく ?? 」
 
 
 

Z750GP 妖怪号、 革パンツ忘れて 大会遠征記

革パンツは、ライディング時に膝など下半身をしっかりと支えるだけではなく、万が一の転倒時には身体を守ってくれる大切な装備だし、スポーツライディングでは必須とも言えるほどだ。
    
それなのに、その革パンツを忘れて大会へ遠征してしまった時の映像です。
     


Gパンのままでは滑るので、滑り止め用にテープをタンクに貼って、「 コースの縁石は痛いだろうな~ 」 と、丁寧に走ったのが良かったのかも知れません。
 
 

トラ再走計画・『 フロントスプリング の 選定 』

オートバイの整備やセッティング作業の中で、エンジン本体を除けば、最も “正解” を導き出し難いのが サスペンションのセッティングで、その中でも フロントサスペンション の 仕様変更(セッティング)ほど 最適セッティング(正解)が出難いモノはない。

本来は、個人ごとに最適を求めて自由に行なうべき作業だけど、記事とかで紹介されている方法の中には明らかに間違った変更作業が紹介されていて、最適セっティングから遠ざかるだけでなく安全性が保てない作業が紹介されているので、今回の投稿でセッティング作業の方向性の参考になればと思っている次第です。

 

1. なぜ スプリングを変更するのか  ( フロントスプリングの重要性 )

ほとんどのオートバイにはサスペンションが装着されている。
最初は乗り心地を良くするために生まれたサスペンションだけど、今やタイヤのグリップ(接地性)を高め、ハンドリング(操縦性)と安定性を高めるためにサスペンションは欠かせない装置だ。

そしてサスペンションの主役が「スプリング(ばね)」だから、好みのハンドリングを求めるならばスプリングの変更が一番の基本なのだ。

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特に、フロントサスペンションのスプリング(以降:フロントスプリング)は リアサスペンションのスプリングとは異なり、フロントタイヤが左右に切れるステアリング(操舵機構)と一緒になっているから、フロントスプリングの動き方はハンドリング(操縦性)に大きく影響するのだ。

しかもライダーはハンドルを握る手の平を通じてフロントタイヤの接地感や安定感を常に感じているから、どんな時でも安心できる乗り味にする為にも、フロントスプリングの仕様・特性の設定・変更には細心の注意が必要なのだ。

だから、メーカーが発売するオートバイの場合、同じ型式であっても年度が変わればスプリングの仕様が変更されているのが珍しくないほどで、オートバイメーカーも神経を使っている部品の一つだ。

実は、僕自身もスプリングの変更はしょっちゅう行なっているけど、メーカーでさえ常に変更している程だから、最適なハンドリングを得るのは簡単な事ではない事は知っている。

今回は、トラ再走計画に合わせて、改めてスプリングの仕様を検討している最中だから、興味のある人は付き合ってほしい。

 
 
2. スプリングの種類   ( スプリングの種類と特性 )

四輪車とは違って、オートバイのサスペンションに使われているスプリングは、ほとんどが“コイル状”に巻かれたコイルスプリングだ。
そして、フロントサスペンションに採用されているスプリングには、そのスプリングの特性を示すスプリングレート(バネ定数)が一定の“シングルレート”のスプリングと、スプリングが縮む途中で別のスプリングレートへと変化する“ツインレート”のスプリングがある。
公道用の市販車は“シングルレート”と“ツインレート”のどちらの採用例もあり 、車両特性やメーカーの考えによってどちらかを選ぶのだ。

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見分け方は簡単で、“シングルレート”の場合はコイル状の巻き方(巻く間隔=ピッチ)が一定で、“ツインレート”の場合には途中で巻き方(巻く間隔=ピッチ)が異なっているのだ。
“ツインレート”の場合には、縮み始めは全体が縮むけど、やがて巻く間隔(ピッチ)縮みが狭い部分で“巻き”が隣同士で重なり合い(線間圧着)、残った部分のスプリングだけが縮むのでスプリングレートが変化するのだ。

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では、どちらを選ぶかと言えば、トラの純正仕様は“シングルレート”だけど、“ツインレート”を選ぶ。
なぜかと言えば、「 良くできたツインレートはシングルレートに勝る 」(妖怪談)からだ。
因みに、レーサーなどの場合には、セッティング変更の容易さから、殆ど“シングルレート”なのだ。



3. 目標のスプリングは ( VTRからトラへ )

今回のスプリング選択は、今までよりも簡単で正確に出来る方法だと信じている。

今までは、それまでに装着していたスプリングのレートやレート変換点(レートが切り替わる位置)を参考にしながら、もっと良い操縦性が欲しくて、次から次へとスプリングの変更をしてきた。
でも今回は、VTR250 で気に入ったスプリングの特性を参考に、トラ号に合う筈のスプリングの特性を探り出す方法だ。

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その為に、VTR250 と トラ号 それぞれの前後輪別の荷重を表にした。

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次に、ライダーの装備重量(体重+イロイロ)が前後均等(半分ずつ)に荷重として加わるとすれば、下の表のようになる。

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VTR250 と トラ号のホイールベース(前後タイヤ中心間距離=軸距)は殆ど同じだから、重心高の多少の違いはあるとしても、前輪に掛かる荷重の違いの分だけスプリングレートを考慮してやれば、きっと良いスプリングに巡り会えるはずだ。

前輪荷重の違いを較べると 約 11.1% の違いがあるので、求めるスプリングの初期レート(Ko)は [ 0.58 × 1.11 = 0.64 程度 ] 、スプリングレートが変換した後の二次レート(K1)は [1.01 × 1.11 = 1.12 程度 ] として、ツインレートスプリングの重要な特性である“変換点”は 同じ様な性格を求めて同等の数値とすれば良いだろう。

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つまり、求める初期レート: A は 0.64 Kgf/mm で 二次レート:B は 1.12 Kgf/mm、変換点 C は 58 mm 前後を目標に探せば良いが、条件に合うスプリングはあるだろうか?



4. スプリングの選択   ( 一覧表からの選択 )

“スプリングフェチ”な僕は、時間とお金が余っている(?)時に多くのメーカーのスプリングを買い漁り、製造会社へ特注したスプリングも数多くあるから、ストックしているスプリングの中から選ぶ事にする。

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この表は、ストックしているスプリングの一例だけど、スプリングレートや変換点は計算で算出しているから厳密には正確ではない。
厳密なデータは、スプリングテスターを用意して、一本ずつ正確に計測してやらないといけないが、テスターは高価だし製造されたスプリングは1本毎に“バラツキ”が大きいのが常識だから、そこまで細かい事は追及せずにおこう。

目標として設定したスプリングを表の中から選べば、「 ホンダ製、CBR1000F(SC-31)純正スプリング 」も良い雰囲気だ。二次レート(K1)は少し低目だけど、その分は変換点が早目に来る事で相殺されるから良いかも~ と思ったけど、全長が 447mm、トラ君のフォーク内には収まらないので断念。

同じく、[  ホンダ製 2000年型 ホーネット600 純正スプリング ] も良い雰囲気だ。全長は 312 ㎜ 、カラーを加工すれば装着可能な長さだけど、もう少し刺激的なヤツがないだろうか?
ああ、悩ましい!



5. 過去のスプリング、一番のお気に入りは

ここで、過去に出会ったスプリングの中で、一番のお気に入りを紹介しよう。
それは、WP(以前は ホワイトパワーの名称)製、ブロス(L型)用の フロントスプリングだ。

その頃は、今ほどに深く考えもせず(=悩みもせず)、好きなメーカー製だったので買ったけど、後にも先にも、このスプリングほどにライダーの意のままに、時にはかゆい所に手が届くほどに、どても性格の良い頼もしいヤツだった。

だから、そのスプリングと一緒だったら、どんなセクションも軽々とこなしてくれると安心しきっていたほどだ。

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今になって考えてみれば、そのスプリングは メーカーの設計者とテストライダーの情熱の賜物だったのだと実感している。
情熱のある若者達によってオランダで創業されたこの会社(WP社)は、1990年頃、きっと スプリングに情熱を傾けていたエンジニア達が居たと信じている。

というのは、スプリングで通常使用されている 線材は 4.5 ~ 5.0 mm前後が常識なのに、5.5 mmという常識外れに太い線材でまとめ上げられていたので、固有振動数が低く、同じスプリングレートでも“雑味”が少なく澄んでいて、大人しくも逞しい働きをしてくれていたと信じている。

ただこの WP社、今はKTMの傘下企業になってしまい、KTMはインド企業の傘下になっていて、この「一番のお気に入り」以降、同社からは 唸らせるような製品は出ていないようで残念だ。



6. プリロード荷重(イニシャル荷重)について

ちょっと横道に入って、スプリングをサスペンションに組み付ける際、最初に縮めて加えておく力(セット荷重 とも プリロード荷重とも言う )の事を書こう。

オートバイの場合には、四輪の場合とは違って、サスペンションにスプリングを組み込む際には 一定の力(荷重)を加えた状態(つまり縮めて組み付ける)のが一般的だ。

そして、フロントスプリングのプリロード荷重は、オートバイが同じであれば、交換するスプリングの特性が異なっても、ほぼ一定の値が最適値になる事を僕は経験的に知っている。

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これは、リアスプリングのプリロード荷重(イニシャル)はライダー重量などに合わせて調整する事が重要なのと較べて、フロントスプリングのプリロード荷重は対照的な扱いになっている事からも分かる事。

殆どのオートバイのリアサスペンションにはプリロード荷重の調整機構がついているのに、フロントはそれが殆ど装着されていない事からも、ある特定の荷重設定から大きく変更する必要は少ないのだ。

VTR250の場合には、現状のスプリング(51401-NKD)を組み込む際には 15.3 mm縮めているので、初期レート 0.58 Kgf/mm × 15.3 mm で、プリロード荷重は 約 8.8 Kgf であり、同じ車両でスプリング変更する際にもは常にこの荷重値を守って部品設定をしているほどだ。

同じ様に、トラ君の場合を考えれば、前輪荷重が 約 1.11 倍になるので、トラ君のプリロード荷重 = 8.8 Kgf × 1.11 = 9.8 Kgf を 参考にする事になる。

 
 
7. 「最適トレール量」という考え方  (フロントサスペンションの目的)

今回は VTR250 で最適なスプリングに出会えたので、それを参考にして、トラ君の体重(前輪荷重)に合わせて 良いマッチングのスプリングを検討するお話だ。

でも、こんなに多くのスプリングを蒐集して、細かな計算に時間を掛けてまでスプリングに神経を使う事に疑問を抱く人が大半だろう。

その疑問に答えるとすれば、「最適トレール量」追及の為だとしか言えないので、そこを少し説明しよう。

オートバイのフロントタイヤには常に様々な力が加わっていて、それが 結果的にハンドリング(操縦性)やスタビリティ(安定性)となって表れるが、そのタイヤに掛かる力を左右する最も大きな要素が 「トレール量」だ。
この「トレール量」は フロントタイヤの“ 方向安定性 ”をコントロールしている要素で、その「トレール量」はオートバイの状況に合わせて大きくなったり小さくなったりして“方向安定性”を変化させ、オートバイの動きを自動的に制御している大切な要素だ。

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つまり、フロントフォークが伸びた時には「トレール量」が増えてフロントタイヤの直進安定性を高めて、直進しやすい状態にして、アクセルを離してブレーキを掛ければ、フロントフォークが縮んで「トレール量」が減ってフロントタイヤの直進安定性を下げ、旋回しやすい状態にするという具合なのだ。
かと言って、直進だけが得意で曲がり難くいオートバイは危ないし、少しバンクさせただけで意図以上に旋回しようとするオートバイもライダーは安心して安全に走れない。

だから、どんな走行状態でも、ライダーの意図に合わせて、ライダーには不安感をほとんど感じさせず、その時々で最適な直進安定性(トレール量)をフロントタイヤに与えるフロントサスペンションが一番良いサスペションなのだ。
そして、走行状態に合わせてフロントフォークを最適の長さへと伸び縮みさせ、「最適トレール量」を自動的に導き出してくれる部品こそ“フロントスプリング”だから、最適なスプリングに出会う事には大きな価値があるし、その選択に時間や神経を使っても決して無駄とは言えないのだ。

この「最適トレール量」の考え方はとても大変に大切だから、テストには出ないけど、覚えておくのがお勧めだ。



8. 間違いだらけの スプリング交換 (細心の注意が必要な交換作業)

ただし、フロントスプリングの変更には幾つか注意すべき事がある。
雑誌記事や個人のブログ記事を見れば間違いだらけなのは珍しい事ではないし、スプリングメーカーの指示書さえ大切な事は書かれていないので、ここに幾つか書き留めておこう。

【 プリロード荷重 の 設定 】

プリロード荷重とは スプリングを組み込む時に縮めておく力の大きさで、この値の大小でフロントサスペンションの動き方や操舵感も変わってしまうものだ。

だから、先にも書いたけど、交換前と交換後のスプリングの特性の違いやマッチングを正しく確認したいなら、プリロード荷重は同じ値にしておく必要がある。( でも、この事に気づいている人は多くない )

食べ物で例え話をすれば、食材をいつもより高級にして味わいの違いを較べたければ、いつもと同じ調理方法で較べる必要があるのと同じだ。
プリロード荷重を変えてしまう事は、高級食材にして香辛料も一杯使ってしまう様なもので、その良し悪しの比較はとうてい出来ないからだ。
中には、交換前後のスプリングの長さの違いに合わせて、内部の部品(カラー)やアジャスターを調整して、セット時に縮める量を一緒にしている例もあるけど、それも正しいとは言えない。

なぜなら、スプリング毎にスプリングレートは違っているから、同じ縮め量にしてしまうとプリロード荷重は交換前後で一緒にならないからだ。

 

正しくは、交換前後のスプリングのレートと縮め量から、同じプリロード荷重になる様に縮め量を求めて調整する必要がある。

【 1G' 車高 の 設定 】

ここで言う 「1G' 車高」とは、乗車時のフロントサスペンションの長さ(縮み量)であり、フロント部の“高さ”を表す概念で、その車高とリアの車高とのバランスが変わるとオートバイの挙動は変化する事を覚えておいて欲しい。
だから、スプリング交換の前後で フロントの「 1G' 車高 」の値を同じに揃えなければ、前後の車高バランスの変化で操縦性の変化が表れるから、スプリング交換後に操縦性の“違い”を感じても スプリングの特性変更の影響とは言えないのだ。

【 フォークオイル と 残ストローク

フロントスプリングの交換に合わせてフォークオイルを交換する事は多いけど、そのフォークオイルの量をマニュアル通りにメスシリンダーで計測して交換したり、マニュアルが指定の油面高さに調整している誤った作業例が多いようだ。

フォークオイルの量はフロントフォーク内の空気の量を決める為にあるものだから、空気の量が違ってしまうとそれだけで操縦性に影響を及ぼすので、空気の量を変えない様にオイル量の調整が必要になるのだ。
つまり、交換前後のフロントスプリングの体積の差の分だけオイルの量も変更する必要がある。体積は計測し難いので、スプリング毎に重量を測り、重量の差とバネ鋼の比重(一般に 7程度)から体積差を算出してオイル量を調整する必要があるし、フォーク内部のカラー等を変更する場合にはその体積差を考慮したオイル量調整が必要になる。

その上、フォークオイル交換後のエア抜き作業を厳密に行なったとしても、細部にからまったフォーク内部のエアを完全に抜くのは難しいから、油面調整だけで交換前後のフォーク内空気の量を正確に合わせる事は出来ない。

そこで、そんなフォークオイル交換作業でお勧めの方法が 「残ストローク」で調整する方法だ。
「残ストローク」とは、フロントフォークが最大限に縮んだ時のフォーク長さの事で、その最大ストローク(フルボトム)の時に、フロントタイヤの安定性を失わない為に必要な「トレール量」を最適に確保するのに必要な値だ。
「残ストローク」の計測は、インナーチューブにマーカーをセットした後に急ブレーキなどでフルボトムさせた時のマーカー位置で測れるものだ。(正立式フォークと倒立式では多少異なるが・・)

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この「残ストローク」の値はオートバイ安定性、特にブレーキングや路面ギャップなどで大きくフロントフォークが縮んだ際の安定性の確保するのに重要な要素(最低限界トレール量)の管理に欠かせないので、プリング交換の前後で「残ストローク」の値が同じになるように、実際に計測しながらフォークオイルの抜き差しをして調整する作業も欠かせないものだ。

そうやって、ここまでの作業を行なった後で、ようやくスプリング変更の本当の価値やマッチングが確認できるのだ。

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妖怪 + VTR 250 の場合には、「1G' 車高」は 約 100 mm、「 残ストローク量(フルバンプ時)」は 約 43 mm という経験値があるので、スプリングの変更をする時には常に「プリロード荷重」を含めて、それらの値が同じになるように必ず調整してからスプリングの評価をしてきた。

「1G' 車高」からフルバンプの「残ストローク」までの間のサスペンション長さの変化の仕方は、装着したスプリング毎に違った特性を示すから、「トレール量」の変化の仕方も違うし、当然 スプリングによって操縦性や安定性が違うので、この「1G’ 車高」と「残ストローク」までの間の挙動でスプリングを評価している。

そして、VTR250で出会えた最適(最良)なスプリングが 「 51401-NKD 」という事だ。

では、また改めて。


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i 君のアドバイスが心に残って ・・・ ♪

リハビリテーションは進み

暫くオートバイから離れてから、改めてリターンライディングした頃は、この自由練習会はリターン&リハビリテーションにとても効果的でした。
自分のペースで自分の技量に合わせて、疲れ過ぎない様に自由に楽しめました。
 
それから、参加する度に徐々にリハビリテーションの効果も高まり、以前の様な緻密な車体調整へと気持ちが向くようになりました。
リターン直後は細かなミスが多かった整備勘も、整備を繰り返す度に練度と精度が高まり、以前からのデータ記録帳を開く時間も増えいき、徐々にセッティングという“迷宮”の入り口に近づいてきました。
  
オートバイ自身のバランスを整えるのはもちろん、ライダーとのバランスを整えるセッティング。
これか整ってこそ、もっと高い次元でもっと大きな喜びになるから楽しみです。

  
  
■ タイヤの交換

昨年12月中旬に交換したタイヤも摩耗限界(フロントのエッジ:0 分山)になったので、今年発売の新シリーズへと交換しました。
  
従来の α-13(HR規格)から α-14(HR規格)へと手組み交換したのですが、設計に
小さくない変化があるようです。
ビード剛性とサイド(ウォール)剛性が落としてあり、しかも均質で適度なハリと潤い感(?)が保たれていて、2000年代初期の M社製品のよう ???
  
α-10 時代から α-11、-12 の変化も味わってきたけど、今回の変化が一番大きい?
と思えるモノ。
しかも、ZR規格(適応速度レンジが更に高い規格)の α-14 は、別機:トラ に履かせたけど、HR規格とは異なり、ビード剛性を従来より一段階高めるなど設計ポリシーも違っている?
それだけ、対応速度域の低い HR規格には最適設計されているのかも知れない。
  
これは、実際に走ってみるのが楽しみだし、新しくデータも取り直さなくては! と
この時は思っていたのでした。
  
しかし、それ以外に心配事も一つ。
脱いだリアタイヤのアブレーション(正常範囲の波立ち摩耗)が、右と左で違う!
右側は正しく路面で仕事をした跡があるのに、左側にはそれが少ない。
  
右と左での練習内容・頻度は変わらないので、ライディングの左右差があるのか?
それとも 前後タイヤの整列がずれているのか?
  
とりあえず、“前後妖怪棒”を使って前後整列を整えて、準備を完了しました。

 
 
■ アンダーステムブラケットボルトの変更

オートバイの操縦性に影響するボルトと言えば アンダーステムブラケット(俗称:三つ又)の フォーク固定用ボルトで、その締め付けトルク次第で操縦性と安定性に大きく影響するというのが持論。
  
今までは、“伸び”や“さび”が発生しやすいノーマル仕様のボルトから、「ステンレス」製のボルトへと変更して、それを基にセット出しをしていました。
が、ステンレス特有の“かじり”に悩まされてきたので、今度は「クロメート仕上げ」の
スチールボルト に 「グリス塗布」(スレッドコンパウンド塗布)へと変更したのです。

 
万全を尽くすため、ボルトサイズ:M10 細目(P 1.25)用のタップを手配して、ブラケット側の ボルト穴を正しく整備し直し、ノーマルより 5 ㎜ 長いクロメート仕上げのボルトへと交換して、締め付けトルクは ノーマル指定の 39 Nm(ニュートンメーター) から 36 Nm へと落として様子を見る事にしました。

 
 

■ ダンパーセットも確認

もう一つ、言い訳をします。
リハビリテーションの楽しさにまみれて、整備勘の回復に神経を使って、全く セッティングへの注意が不足していたようです。
  
いえ、フロントフォークの車高調整トストローク調整には注意を向けていたのですが、
リアのダンパーのセット確認には注意が向いてなかったのです。
その事に前日までに気づいていたので、リアのダンパー(減衰力)セッティングを、過去のタイヤ α-12 でのセット値へとリセットし直したのですが、タイヤの特性は変化している筈だし、ダンパーの経年変化はしている筈だから、本当ならば 実際に走って確認・調整すべき事だったのです。
 

結局、ダンパーセッティングだけでなく、タイヤ変更による適正タイヤ空気圧の確認・調整、そして アンダーブラケット ボルトのトルク確認など、大切な事を当日は全て忘れ、後々後悔するハメになったのです。

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■ 走ってみた感じは ・・

イベントが始まり、個人練習をしてみれば、「オートバイはイイ感じ!」

イベント専用新品ブーツの“慣らし”が中々進まないので、バンク角が稼げない。
バンクの度に路面で削り続けたけど、一番好きなバンク角での走行ができない!
  
でも、オートバイの動きは安定していて、グリップ感が高くて良い感じでした。
実際に、ベテランSさんに乗ってみてもらえば、「安定していて怖くなくイイ感じ」と
お褒めの言葉をいただいた。
 
それでは!と、嬉しい言葉をもっと聞きたくて、伸び盛り I 君にも乗ってもらった。
I 君も 「怖くないです」と言ってくれたけど、続いての言葉が気になった。

「 でも、以前の様な感じが、落ち着きの無いような雰囲気が懐かしいデス」( i 君 談)
 
んん?

そういえば、ベテランSさん、初参加の人の ノーマルVTR に乗った後の言葉、

「 懐かしいですね、鈴鹿サーキットのトレーニング施設で乗った時の感じと同じです」

んんん? 僕の VTR は VTR では ないのかな?

 
 

■ ショトコース走行練習にて

午後 2時過ぎからの ショートコース・タイム測定走行練習は順調に始まりました。

「 うん、うん、安定していて 良い感じ! 」

でも、コースに慣れて、更にペースを上げて、コースとオートバイとの対話を高めようとしても、これが一番楽しいし、スキルアップの活力だと言うのに、

「 反応が鈍い、口数の少ない、頑固なオートバイ !!」 になったのです。
 
ターンへ向けてターンインは出来ても、ターン中に べったり無口になる。
無口になるから ターンアウトに向けての アクセルポイントが掴めない。

ターンした途端に無口になるから、ターン部に置く “仮想 ベースサークル(基本円)”が
見えなくなり、ターンの一つひとつが手探り状態になるから、細かな切り替えしや
微調整さえやり難くなる。

「 何故なんだ!」と考えて、気づけば良かったのに、
そのまま走り続けて、ターンイン中に 左へ簡単にスリップダウン
そう、あの “左”でした。

 

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■ 帰路にて

イベントは無事に終了して、帰路の高速道路上で一日の走行をシミュレーション。
特に、個人練習で行なった 15 mピッチでの Oの字旋回 と ショートコース走行を。

この時になって、ようやく気付いたのが 大切な「タイヤのエア調整・確認」をしなかった事、アンダーステムブラケットの「フォーク固定用ボルトの締め付けトルク調整・確認」と新タイヤに合わせての「リア・ダンパーの調整・確認」を忘れていた事でした。
 
恐らく、新タイヤ α-14 に最適なエア値は 従来モデルとは違う筈。
このエア圧変更と 固定用ボルトのトルク値変更と併せて、ターン中に荷重を高めた時に
感じた フロント全体の“ ヨレ感 ”は解消できるかも。
そうすれば、ターン中の方向安定性がはっきりと出てきて、ベースサークル(基本円)からのターンアウト(アクセルONによる)もはっきりと見えたかも知れないな ・・・ と。

後悔 & 後悔

i 君の言っていた、「 以前の様な雰囲気も好きです 」のアドバイスもその時に理解できたのです。
オートバイが自らの意思をはっきりと持ち、「 こっちへ行きまっせ!」と言ってくる感じが。

 
 

■ 次に向けて

左へターンイン中に転倒したのは、リアタイヤのアブレーションが右と左で差が出ている事と無関係ではないだろう。
実際、ガレージに戻ってから確認すれば、左右のアブレーションの差は依然として出ている。
 
リアスイングアームのピポット部、ベアリングとカラーの摩耗のチェック、そしてピポットシャフト、ピポット周りのエンジンマウントボルトの分解・再整備 が必要だ。
 
「最適エア圧」、「最適フォーク固定用ボルト締め付けトルク」の調整・確認以外に、
フロントフォーク周りのアライメント変更は必要だろう。

 
・ 0 G(無荷重)時 フロント車高 : 143 ㎜
・ 1G'(乗車荷重)時 フロント車高 : 100.5 ㎜
・ 残ストローク値(練習走行時) : 49 ㎜
・ 残ストローク値(フルバンプ時):: 45 ㎜(推定)
 
ガレージにて測定した結果、【 通常ストローク長 】が 94 ㎜ ほどだった。
1G' 時車高はそのままでも、残ストローク値は 2~3 ㎜ は下げる方向性だろう。(きっと ・・!)

さあ、次に向けて、オートバイの一番大切な部品“タイヤ”の性能を発揮させられるようになってみたいものだ、( なるかなぁ ~? なるとイイなぁ~ )

 
以上が 今回の参加で得た体験で感想文です。
 

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